星美里 
星美里とはもちろん夏川りみさんの以前の芸名です。 本名「兼久りみ」さんという天才少女はプロ歌手への登竜門とも云うべき「第１０回長崎音楽祭」に沖縄県代表として出場し、見事グランプリを受賞。３年後に１６歳で「星美里」としてデビューしました。故郷を出て東京での新しい生活、大変だったでしょうね。 星美里としては、１９８９年から１９９２年にかけて、３枚のシングル＆カセットがリリースされました。 １０代後半に出したこれらの曲は、今では超レアものとなっています。 当時は都はるみ以来の逸材といわれた本格的演歌少女だったそうです。 残念ながら、私はこの星美里時代のことは、まったく知りませんでした。夏川りみとして「涙そうそう」がヒットしてから、あわててあちこち訪ね歩きなんとか探し出して聴いたのです。 全部で６曲しかありませんが、星美里の歌は、私に演歌というものを見直させました。いやあ、なんちゅうか嫌っていた演歌が急に聞けるようになったんですから、本当に不思議ですわ！ 結構聞き込んでおりますので、簡単な感想を述べさせていただくのを、皆さま、どうぞお許しくださいませ。星美里さんのファンでもありますので・・・・ 「しほり」は、デビュー曲にふさわしいですね。南の歌姫が北の曲を歌うということを考えると不思議な感じがしますが、初々しい情感があふれる良い曲です。 「ひらがなみたいにやさしくて素直な娘に育てよと、しほりと名付けてくた父〜♪」そういえば、りみさんという本名もひらがなですねえ。何か親しみ感じるなあ。これはほんとにスタンダードで素敵な曲だと思いますよ。 「恋予報」これは武田鉄矢作詞で平尾昌晃作曲というスゴイ曲です。 少女が真っ白な便箋に向かって心模様を綴ろうとするさわやかな演歌になっております。曲のバックは非常に演歌っぽい演奏なんですが、星美里さんはそれを、そんなにド演歌っぽくなく、さらりと歌い上げているんですねえ。 「夢色めまい」これは恋愛情景と女性らしさを前面に押し出した曲です。 やや演歌っぽくなく、ＣＷ曲の「たずね人」も含めて、若干の路線変更でしょう。星美里という歌手の技量と声の美しさを生かそうとしている努力が感じられます。「さよならの手紙、蝶々にちぎり、真夜中に飛ばせば、すべてが終わる〜♪」という歌詞から、私は沖縄の「あやはべるがぁ（可愛い蝶々）」という美しい言葉を思い浮かべました。 「たずね人」この曲は星美里６曲の中で一番演歌らしくない曲ですね。実力派青春アイドル歌謡曲といってもいいでしょう。 「水色のインキ、にじませて書いた愛の日記〜♪」なんて、例えば岩崎宏美が唄っても何の不思議もない情感のこもった青春の歌です。軽々とこんな曲もこなす星美里さん、本当に上手いなあ！ 「湊雨情」この曲は、６曲のなかで一番演歌らしい演歌ですね。 「雨がふる日はさみしくて、磯の鵜の鳥なきやまぬ〜♪」と伊豆の波浮港が唄われています。こんどは星美里の美声を本格演歌としてなんとか表現しようとしたのだと思います。クライマックスの「はぶのみなと〜」という部分で星美里さんの声がぐーんと伸びます。いやあ、やっぱりいい声じゃのう！ 「島だより」は、三線が奏でられ指笛が鳴りいかにも沖縄のご当地ソングという感じで、いい意味でとても船村徹さんが作曲したとは思えませんね。いやあ大好きですこんなウタ！ もちろん私の一番お気に入りの星美里さんの曲です。「黒髪をなでる南風、なちかさぬ声に聞こえます〜♪」ああ、生で聞きたかったなあ。 八重山の島娘からの、都会に出た恋人に対するせつないメッセージという感じで、星美里というより夏川りみさんのイメージにつながりますねえ。そういうことを考えると、この歌が、星美里時代の最後の曲というのは、感慨深いですねえ。 星美里時代というものがあったから、今の夏川りみさんがあるのだと思います。あの夏川りみさんの、清らかでさりげない「こぶし」・・・あれは星美里時代に培われたものではないかと推測します。 私のような、今になってから星美里を聞き込んでいくというのは、少しエキセントリックかも知れませんが。こんなファンがあってもいいんじゃないでしょうか。 声の質は変っておられませんから、また演歌もお願いしたいなあという気がします。さわやかに石垣島を紹介するようなご当地ソング（例えば「加計呂麻慕情」のような曲！）を、ひとつ唄ってほしいなあ。 実際のところ、夏川りみとしてのデビュー曲である「夕映えにゆれて」は、星美里演歌の集大成としても聞けます。 その後、「花になる」のメッセージソング、「涙そうそう」の大ヒット、「鷲ぬ鳥節」のような民謡、「鉛筆画の瞳」のような新しい境地・・・・ そうなんです。この人は、演歌、Ｊポップ、民謡とかいった定義をはみ出している偉大な歌手なんですよ！ |
